あなたは薬についている添付文書を読んだことがありますか?
もしないなら見てみてください。
もし見たことがあるなら、軽い症状から死に至る症状まで、膨大な副作用のリストがあることをご存知でしょう。
「なんでこんなに副作用が多いのか・・・」
と考えたことはありますか?
今日はその”副作用”についてのお話です。
「我々の身体のことはすべて遺伝子に支配されている」
そんな考え方にとらわれた生物学者は、細胞をバラバラにして構成成分を一つひとつ研究すれば、私たちの身体のメカニズムを解明できると信じています。
また、生命現象を引き起こす生化学的な反応は一直線に連なった流れ作業だと信じています。
つまり、ある化学物質がある反応を起こし、次に別の物質が次の反応を起こし・・・
と、順次直線的に反応が進むと思っています。
なので、この直線的なシステムのどこかに問題が生じて病気や機能不全が現れたとするならば、その流れ作業のどこか一か所に起因すると考えているのです。
この考え方をするならば、ダメになったところを修復するには、細胞の欠陥品を正常なものと取り替えてやれば、健康が取り戻せる。
システムの一か所で作られるはずの物質を投与してやれば(つまり、薬を投与してやれば)、健康が取り戻せる。
そういう考え方なのです。
ですが、生体内の反応はそんなに単純なものではなく、”全体的”なのです。
この図は、たんぱく質の相互作用ネットワークを示したものです。
K.G. Guruharsha et al (2011) “A Protein Complex Network of Drosophila melanogaster”
意味はわからなくて良いです。いろんな名前の物質が他のたくさんの物質と関係しあっている。ということだけわかれば良いです。
ここに書かれているのは一部のたんぱく質のみですが、それでもこのような複雑な網目状の図になってしまうのです。
「性決定」のグループ、「RNA合成」のグループ、、、などと役割によってこの網目をぶった切り、相互作用を研究するやり方がメインなのです。
ですが、ある役割に関わるたんぱく質が全く別の機能をもつたんぱく質と影響し合うことはそう珍しいことではありません。
「一つの役割に着目し、その中の鍵になりそうなたんぱく質に影響を与える」というのが薬の仕事です。
ですが、上の図でみてもらった通りたんぱく質一つひとつが複雑に相互作用しているのですから、狙った作用だけが現れる、なんて都合の良いことは起きないのです。
必ず別のどこかに影響を与えます。
心臓のシグナル経路がうまくいかないとして、それを調整する薬を与えたとすると、その薬剤は血流にのって全身に運ばれます。
もしも脳にも同様の経路が存在したとすると、「心疾患用」の薬が意図せず脳や神経系の機能をかく乱することもあるのです。
だから、薬の副作用は軽い症状から死に至るような症状まで多岐にわたるのです。
この記事へのコメントはありません。